「今の自分のレベルじゃうまくいくかわからない」という規模感の仕事を受けたり、頼まれごとをやるとき、わたしはいつも胃が痛くなります。
「こんな仕事なんで受けちゃったんだろう…」
「この日が来なければいいのに…」
なんて弱気な自分がムクムクと顔を出します。
だけど、そういう仕事のほうが自分のキャパを広げてくれるのも事実なんです。
苦しい挑戦を続けると、いつかそれが当たり前にできるようになる
たとえばわたしは今までずーーーっと人前で話すことが苦手でした。
極度に他人の目を気にするし、緊張で頭真っ白になるし、伝えたいことはほとんど話せない。
独立してからトークイベントやセミナーに呼んでもらう機会が増え、「必要とされているからには、人前で話すのもできるようになりたい!」と思うようになりました。
だけどイベント当日が近づくにつれ胃が痛くなり、「電車がめちゃくちゃ遅延して登壇できないなんてことにはならないだろうか…」と不謹慎なことを考えるときもありました。
自分にとって苦しい挑戦、心が震える挑戦っていうのは、いつになっても直前で逃げ出したくなるものです。
だけど、それでいつも逃げ出していたら一生今の自分が変わることはない。
たとえ失敗しても、スベって恥ずかしい思いをしても、「こうするとうまくいかないんだ」という学びは一生の財産になります。
自分が身をもって痛感した教訓は、本を読むより、人の話を聞くよりも絶対に忘れないし、強烈に意識します。
だから次は同じ失敗をしないようにしようと思える。
本当に地道でしんどい道のりだけど、そういうひとつひとつの小さい気づきを積み重ねていくうちに、少し前までしんどいと思っていた挑戦が、気づけば当たり前にできるようになっているのです。
そしてさらにレベルアップした挑戦ができるようになっていく。
ただ、こういう挑戦を続ける限りは人生はずっと胃痛続きです。悩みや葛藤が消えることはありません。
でも、たくさんの挑戦から得られる経験という名の財産は、自分にとってこの上ない「最強の胃薬」にもなります。
挑戦を繰り返すたび、「たとえ失敗しても学びが増えるだけ、失うものはない」とだんだん思えるようになって、最初の一歩のハードルが少しずつ下がっていく。
これは、直前に挑戦から逃げ出した人には決して得られない感覚なんです。
困難が降りかかる人生ほど、深い幸福感を得る
先日、脳科学者の中野信子さんの著書を読んだのですが、印象的な一節がありました。
本来、脳には、何らかの目標を達成することで大きな喜びを感じる、という性質がそなわっています。
(中略)
困難な目標を達成したときにこそ、たくさんの脳内快感物質が分泌されて、大きな喜びを感じます。平穏無事な人生より、さまざまな困難が次々と襲ってくる人生のほうが、それを乗り越えるたびに深い幸福感を感じることができるのです。
歴史上の偉人たちには苦難の連続のような生涯を送った人が多いものですが、脳科学的に考えれば、その人たちの人生は身の震えるような幸福感に満ちていたはずなのです。
歴史上の偉人の人生を見ても、「こんな大変そうな人生は送りたくない」と感じたりするものですが、当の本人からすれば、その波乱に満ちた人生ほど幸せなものはなかったのかもしれません。
たしかに自分の人生を顧みても、人間としての器を広げてくれたのは、いつも苦しみを伴う経験でした。
その苦しみを受け入れ、乗り越えた先で、はじめて周りの人への心からの感謝が生まれたり、生きていることへの充実感をひしひしと味わうようになる。
そう思うと、人生は一場面の苦しみという「点」で見るのではなく、生涯通してどうなるのかという「線」で見る重要性も感じます。
チャップリンが
『人生は、近くでみると悲劇だが、遠くからみれば喜劇である』
という言葉を残しているように、どんな苦しい挑戦も、自分の捉え方次第ですべて喜劇になるのかもしれません。
ただ、そんなこと言って自らをあえて苦しい状況ばかりに追い込んでいると、周囲から「アイツはドMだ」と言われるようになります。
そんな周囲の声すらも心地がいいと感じられるようになったら、あなたは真の挑戦者(=真のドM)になるでしょう。
参考図書:『脳科学からみた「祈り」』中野信子